人、街、酒

第9回


辰馬本家酒造株式会社の第15代当主・辰馬章夫さん。暮らしのなかでの日本酒についてお話いただきました。


日本酒で乾杯


 京都市は、昨年末の市議会で「清酒の普及促進に関する条例」案を可決し、本年から施行されました。罰則なしの条例ですが、乾杯は日本酒でする取り組みへの協力を一般市民に求めています。

 西宮では、数年前から酒造会社の働きかけで、「乾杯は日本酒で」という機運が高まっています。西宮商工会議所が主催する新年の賀詞交歓会をはじめ諸行事や食事会、西宮市の桜まつり等の場での乾杯には日本酒が振舞われます。

 「酒席になるとよく『無礼講』という言葉が出ますが、これは『礼講』と対になった言葉であって、無礼を働いてよいという意味ではないですね。礼講とは、厳格な形式と席次に則って行なわれる神事の会のこと。礼講の後、催される宴席では、形式や席次にこだわらないことから、無礼講と言うのです。酒を飲んでの不祥事はもってのほか、やはり楽しく健全に飲んでいただきたい。酒との関わり方は、食に関する教育と併せて、未成年の教育に取り入れるべきだと思いますね」


食文化への貢献


 平成15年9月から、酒類小売業者は、酒類販売管理者を選任し、酒類販売管理研修を受講させるよう努めることが義務付けられました。  未成年と思われる者に対する年齢確認の実施など、酒類の販売業務を行うに当たって法令遵守を確認することが販売管理に求められています。また、この管理者の仕事は、酒類の特性や商品知識等を修得することにより、酒を正しく普及させることも目的とされています。

 「料理によって、合うお酒も変わってきます。お客様から問われた時に、料理の味を引き立てるようなお酒をお勧めできるよう、熱意ある流通・飲食店さんはよく勉強されています。白鹿では一貫して、質が量を呼ぶという循環を大切にした商品開発を心掛けてきました。今は理屈よりイメージで商品が売れる時代でもありますが、四季醸造や多様な流通形態の普及で、五感や季節感が薄らいできていますので、日本ならではの食事と酒を伝えることで、食文化の未来を豊かにしたいですね」

 古来、日本には「行事食」があります。季節ごとの行事のための食事と、そこに供されるお酒。これこそが、私たちの感性を磨くものでしょう。


つづく



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