人、街、酒

第11回

ギター一本抱えて街から街へ。音楽で人と人をつなぐ桑名晴子さん。出会う人、自然、モノについて語ります。

 兄・桑名正博さんが亡くなってから、関連の行事や法事をこなし、一つの節目を過ぎて、「やっと自分のことを考えていこうと思えるようになってきました」と話す晴子さん。現在、西宮の自宅では、お母さんとの二人暮らし。親の介護問題にも直面しています。

人のこころが温かい

 健康のために大阪から西宮に移り住んでいた母も年をとりまして、彼女の世話のために私も西宮住民になったのですが、西宮は震災で多くのことに犠牲や申請を経た経験をしている町だけに、人が優しくて温かいですね。人の絆があったのは、震災の時だけだったという声を聞くこともありますが、全国を歌で旅している私から見ると、阪神間の人はとても思いやりがあります。住みやすいと言われるのも、もっともだと思いますよ。

親との距離の取り方

 母親とは、親子だからぶつかることも多いですね。互いに引かないから、言い合いになって、腹が立つあまり自分の部屋で「もおっ!」って叫んで発散していると、下の部屋からも母が同じように叫んでいたりね(笑)
 でも、母親の存在って、一目置くと言うか、面倒くさいけれどありがたいところがありますね。例えば、自分が飛び立とうとするときに、下から足をぐいっと足を引っ張ってくることがあるんです。「足を引っ張って邪魔をする」と思えば、迷惑な存在ということになりますが、私は、「そのおかげで地に足を付けることができる」気づきをくれる存在と思っています。だから、腹が立つこともあるけれど、やはり大切な人ですね。

介護問題を考える

 よく「お母さんの世話をしながら仕事して、えらいね」と言われます。親のことだから当たり前。「しんどいなとか、面倒やな」などと思ってもいいんじゃないですか。「思いました。ごめんちゃい」で済む程度のことです。どんなに有名な人であろうが、その人の地位におかまいなしに、親の介護問題は振りかかってきます。ただ淡々と愛として受け止めていくだけのことです。
つづく


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