人、街、酒

第10回

ギター一本抱えて街から街へ。音楽で人と人をつなぐ桑名晴子さん。出会う人、自然、モノについて語ります。


 3月8日は晴子さんの亡父の誕生日でした。この日、兄・桑名正博さんの建碑式を完了しました。
 「兄は、父親の命日より誕生日を大切にして、必ずお墓や仏壇にお詣りする人でした」と晴子さん。今回の建碑式は、一族全員集合して行いました。

自分の居場所

 全員集合を呼び掛けたのは、「今ここにあることには意味があることを見せてあげたい」と思ったからなのです。父は甥たちにとっては、おじいちゃん。おじいちゃんがあって、そのおかげでお父さんがあって、そして、自ら選んでここに生まれてきたこと、この繋がりを感じてほしかったんです。誰でもいつでもここに来れば、おじいちゃんやお父さんに会えるのだから、よりどころにしていい、ということを伝えたかったのです。

ドラゴンネーム

 奇しくも一九九五年一月十七日にレコーディングした「ドラゴンネーム」の冒頭は、次のような歌詞で始まります。
 「あなたの姿のその向こう/ホントのあなたが笑っている/生まれたときに忘れた/ホントの名前を知っている」
 これは、輪廻転生の考え方に基づくものですが、生れた瞬間に忘れてしまうけれど、ずっと持っている魂の名前があって、人生はその名前を探す旅なのだと思ったのです。どうしてこの人のために働かないといけないのか? ということが生じた時には、きっと前世でその人の魂と深い繋がりが、あったに違いないと考えたのです。そう思うと、今、目の前にある状況もすっと受け入れられるようになるんですね。
 私、カルマ(業)というのは、現世で自分の身体と命を使って何をするのかということだと思うのです。親であれ他人であれ、人のためにすることは「やってあげている」のではなく、それをやり尽くしたら、カルマ解消ということなのだと。  魂は「はい! この体にはいります」と体を選んで命を育むと言う仮説から、「自ら選んでここに生まれてきた」という考えに至り、この曲を生みました。
つづく


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