地球人

第12回

島と川と絵本オペラ

島国と呼ばれる日本に住みながら、島について何も知らなかった僕は、淡路島沖の「沼島」でのコンサートをきっかけに、離島に住む人々の温かさに触れ、島が大好きになりました。

偶然、知り合った放送局のディレクターと意気投合し、「島と音楽を題材に番組を作ろう!」と、全国の離島の生徒を集めて音楽会を企画することになりました。賛同を得た7校を迎え'01に「やしの実コーラス」が実現しました。離島を訪ねて指導した曲を、当日ほぼ初対面の子どもたちが一緒に歌うのです。離島で育った、素朴な子供達の一所懸命な姿は聴く人の心に響き、会場全体がひとつになれた音楽会でした。'10には第2回「やしの実コーラス」も実現し、昨年TV放送された番組では、多くの視聴者が音楽を通じて、島との一体感を感じたことでしょう。

川から発想を得て始めたのが、「武庫川めぐり水コンサート」です。武庫川沿いの学校を音楽で結ぼうと思ったのがきっかけです。

絵本オペラカンパニー「おぺろん」では、絵本をオペラで聞かせるという、今までにない試みにも挑戦しています。

さらなる前進

僕が新しいことを始める時、いつも発想のきっかけになるのはクリティカル・シンキング(批判的な思考)です。興味を持った事や、疑問に思った事をたどっていくと、最後は必ず音楽が答えを導いてくれます。音楽には不思議な力があります。シューベルト、島、川、絵本オペラ。この4つを柱に、人が集まり、出会い、繋がっていくことが、今、最大の喜びです。そこで得たものは確実に、テノール歌手としての糧になっていると感じます。

今後も音楽で人が集う場所を提案し、シューベルトの歌曲を日本語に訳しながら、音楽の世界を伝え広げていきたいと考えています。

おわり



畑儀文さん、1年間の取材におつきあいいただきましてありがとうございました。今後のご活躍をお祈りいたします。

さて、次号からは、辰馬本家酒造株式会社会長であり、西宮商工会議所会頭でもある辰馬章夫さんにご登場いただきます。酒蔵の歴史はそのまま西宮の歴史と言っても過言ではない、伝統ある酒造会社の第15代当主のお話にご期待ください。