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   編集長・正木京子のこの人に会いたい!
 今回お会いしたのは、苦楽園で「庭のソムリエ 季節の詩」を営む石坂拓司さん。百聞は一見に如かずと、手がけた庭を見せていただきました。訪問先は、甲陽整骨鍼灸院院長・森貞壯一さんのご自宅。斜面を活かした庭園は、季節ごとのストーリーが生まれるような庭創り。パーゴラの下で、庭談義に花が咲きました。

石坂 森貞先生は和風がお好きで、奥様は英国風がお好み。お二人の希望をかなえるために、庭園の下段部をイングリッシュガーデンにして草花を植え、斜面を森に見立てて、樹木を配置しました。和室から見える最上段に日本庭園を創りました。木立の小道を抜けていくと英国風から和風に雰囲気が切り換わります。庭は、それぞれの楽しみ方が出来ればいいんです。

森貞 以前の庭も石坂さんにお世話になっていたのですが、新たな庭づくりも本当に私たちと心ひとつになって創ってくれました。新しくできた小さな森を目敏く飛んでくる鳥や蝶たち、季節ごとに違う表情を見せてくれる植物たちを今こうして眺めていると、愛しく、豊かな気持ちになります。嬉しいですね。

石坂 植物は、向かい合うとメッセージを発してくれます。例えば、ここにある6本の北山台杉ですが、京都の高雄まで行って、こちらの庭に合う杉を探して持ってきました。しばらくすると、1本の木の成長が芳しくないので、森貞先生に「あの株は伐った方が良いですよ」とご提案しました。普通は「せっかくここまで育ったのに」と躊躇される方が多いのですが、先生は迷うことなく、「伐りましょう」と。「切る(捨てる)」という行為は、後退のように見えて、実は成長を促すということは、人間形成にも言えることですね。

石坂 見て楽しむ庭もいいですし、自らがその中に入って楽しむ庭も素晴らしいものです。また、我々プロが創る庭ではなく家族の皆さんで創る庭もよいものです。家族の笑顔が絶えない希望に満ち溢れた空間では、子供の成長とともに植物たちもすくすくと成長していきます。育むことの優しさや五感で大自然を満喫できる心のゆとり、誰にでも笑顔で挨拶できる素直な気持ち、庭では、たくさんのことを学べます。見えている景色だけではなく、見えない部分をより大切にして、創り続けていきたいと思っています。

 満開の大輪の花のような、石坂さんの笑顔は、少々元気がなくなりそうな植物もパワーをもらえそうな明るさです。

●西宮市苦楽園二番町8ー22
 TEL.0798ー70ー2680
 庭のソムリエ 季節の詩

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