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   編集長・正木京子のこの人に会いたい!

 創業76年を迎える「散髪やさん」。理容室と美容室を西宮市内に3店、川西市に1店持ち、独立開業を目指す技術者を育て続けています。



 子供の頃から理容師になるつもりだったんですか?

 昭和12年(1937)、現本社の場所で両親が理容店を始めまして、ここで生まれて育ったんですよ。だから西宮が大好き! 理容のことは、自然に習い覚え、店を手伝ってもいました。兄と姉がいるんですが、兄は商社マンとして世界で活躍し、姉は海運会社へ勤めに出ましたので、「私が後を継ぐ」と宣言しまして。主人はカナダに永住するつもりで、たまたま手続きのために帰国していた時に私と会いまして、西宮に永住してくれました。

 阪神淡路大震災の時には?

 被害は甚大で、スタッフたちは余震に怯えていましたので、故郷の親御さんが心配されているだろうと、「戻れる人は、1週間後に戻って来て」と言って、全員を帰しました。残った主人と私で「しばらくは2人で食べていくぐらいはできる」と言っていたんですが、1週間後の夜、全員が次々に帰ってきてくれたんです。「余震が怖い、戻りたくない」という子に「何を言ってるの、お世話になってきたんだから、ご恩返しをする時でしょう」と、親御さんが背中を押してくださったそうです。うれしかったですね。この子たちは宝だと、借りれるだけのお金を借りて、再建のために駆け回りました。お店にいても水汲みしかすることがないので、給料は払うからとお願いして、知り合いの店にしばらく預かってもらった子もいます。今日在るのは、あの時の一丸となった頑張りのおかげです。

 人に喜んでもらえることを考えるチームって?

 「プロジェクトX」と名付けていますが、担当は新入社員。2年生社員が指導しながら、「スタッフみんなが楽しめて満足できることを企画するんです。私たちの仕事はお客様に喜んでいただくことが自分の喜びになってこそですから、まず身近な仲間を喜ばせることから始まります。

 採用試験をされないんですね?

 私どもは、「見えた者順」なんです。募集を始めたら期限までに来てくれた順に採用しています。中には不器用な子もいますし、性格の難しい子もいます。それを育てて一人前にするのが、私たちの仕事だと思っているんです。数多の理美容室がある中で私どもを選んで、四国や九州からも応募してくれるスタッフとの出会いは、ご縁ですからね。
 お預かりしたスタッフは、理容学校に通わせて資格を取得させ、インターン後、技術者として一人前にし、16年くらいで独り立ちします。その間、食事は「手づくり」と決め、通学にはお弁当も持たせます。彼らの健康管理は私の仕事ですから。さらに心のケアもしないと。研修を終えて深夜に報告に来る子たちから悩みごとを聞くこともありますので、それまでパジャマに着替えることはしません。
 独立開業に当たっては、店探しから手伝います。そんな子たちが「先月はこれだけお客さんが増えました」などと報告をくれるのが、一番うれしいですね。豊岡には、80歳の現役でハサミを持っている父の代の弟子がいますよ。「フリゼーア」は、「職人」という意味。皆様に愛される息の長い職人を育てていきたいですね。

●西宮市大井手町1-13
 TEL.0798-71-1150
 フリゼーア小牧

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