都会の夜空は明るい星しか見えないけれど、
晴れた夜には、ちょっとだけ足を止めて空を見上げてみませんか。

2015.5【251】★ニュー・ホライズンズ
2006年8月に国際天文学連合によって、「準惑星」に分類された冥王星。同年1月に打ち上げられた、NASAの無人探査機「ニュー・ホライズンズ」が今年7月に最接近することで話題になっています。探査機が冥王星に近づいて観測を行うのは史上初です。
太陽から冥王星までの距離は59億km。太陽と地球の距離の39倍にもなります。その直径は2300kmで、月(同3500km)よりも小さいのです。このため、1930年の発見以来詳しく調べることが難しかったのですが、今回のニュー・ホライズンズの観測によって、いくつもの発見がもたらされるに違いありません。
ニュー・ホライズンズは、冥王星とその衛星の探査だけにとどまらず、さらに外側にある太陽系外縁天体へと向かいます。その後は、2020年頃に太陽系を離脱する予定なのだそうです。名前の通り、「新たな地平線」を求めて宇宙の闇を飛び続ける探査機の活躍に期待が高まります。

2015.4【250】★からす座とコップ座
4月4日(土)の皆既月食は、残念ながら西宮では厚い雲に覆われてしまい見えませんでしたね。気を取り直して、今回は春の星座、からす座と、その隣に置かれたコップ座に伝わるお話のひとつをご紹介しましょう。
かつてカラスは、白銀に輝く立派な羽を持ち、太陽神アポロンに仕えていました。アポロンと、その恋人コロニスの連絡係として、神々の国と人間界を行き来していたのですが、ある日、自分が遅刻した言い訳に「コロニスが他の男性とこっそり会っているのを見た」と、ありもしない嘘をつきます。その嘘を信じたアポロンは、誤ってコロニスを矢で射てしまいました。しかし、息絶える寸前の彼女の言葉から嘘がばれ、激怒したアポロンによってカラスは真っ黒な羽に変えられて、天に釘付けにされたのでした。
そして、嘘つきのカラスはいくら喉がかわいても、目の前にあるコップの水を飲むことができないという罰も与えられているのだといわれています。おとめ座スピカの右下に並ぶ、少し目立つ四角形がからす座です。コップ座は暗い星が多いので見つかるかな?

2015.3【249】★皆既月食
4月4日(土)、日本全国で皆既月食が見られます。19時15分から欠け始め、20時54分からは月が地球の影に入ってしまう皆既食になります。皆既食の終わりは21時6分。影から少しずつ抜け出し、22時45分に丸いお月様に戻ります。
月食は、太陽・地球・月が一直線に並んだ満月のときにしか起きません。でも、満月のたびに起こらないのはなぜ? 実は、月の公転軌道が地球の公転軌道に対して少し傾いていて、いつもは地球の影の上や下にずれたところを通っているからなのです。
お家でのんびり月の欠ける様子をながめるのも良いし、天文台や科学館などの月食観察会に参加して、大勢でにぎやかに空を見上げるのも楽しいものです。
西宮市内では、「皆既月食特別観望会 星空案内in西宮ガーデンズ」(19時〜21時20分、悪天候中止)を阪急西宮ガーデンズ4Fスカイガーデンで開催の予定です。お買い物がてら立ち寄って、星空案内人のお話を聞きながら月食を観察してみませんか。ちなみに、この次に皆既月食が見られるのは3年後の2018年1月31日(水)です。

2015.2【248】★星の明るさのお話
この欄でもよく使う、星の明るさを表す「1等星、2等星」という言葉。これは、紀元前150年頃のギリシャの天文学者ヒッパルコスが、肉眼で最も明るく見える星を1等星、最も暗い星を6等星と決めて、6つに分類したことに始まります。
観測技術が進み、星の光を精密に測れるようになると、1等星は6等星のちょうど100倍の明るさであることがわかりました。数字が小さいほど明るく、1等級上がると、明るさは2.5倍になります。また、1等星より明るい星には−(マイナス)をつけて表します。小数点以下の数値で詳しく表記することもあります。
ちなみに、太陽は−26.7等、月は満月のときで−12.7等、全天で太陽の次に明るい恒星(自分で光っている星)シリウスは−1.5等です。
市街地だと肉眼で見えるのは、2等星までがやっとでしょうから、50個見えたら良いほうかもしれません。よく晴れた夜に、人工の光がないなどの条件がそろえば、約3,000個もの星が見えるといいます。いつかそんな星空をながめてみたいものですね。

2015.1【247】★しし座と月と木星
21時頃に東の空に上ってくる「しし座」は、春の星座。見ごろというにはまだ少し早いのですが、もうすぐ月や木星との共演が見られるので今回ご紹介。
しし座を見つけるときの目印は、「?」を左右裏返したように見える星の並びです。これは「獅子の大鎌」と呼ばれ、ライオンのたてがみの部分。「?」の一番下の「.」にあたるのが、1等星の「レグルス」です。尾のほうには2等星の「デネボラ」があり、こちらはおとめ座の「スピカ」、うしかい座の「アークトゥルス」とともに春の大三角形をつくります。
ギリシャ神話では、勇者ヘラクレスが最初の冒険で戦った、弓矢や剣をも跳ね返す毛皮を持つ人喰いライオンの姿だとされています。苦戦の末、ライオンに勝利したヘラクレスは、その強靭な毛皮を鎧として身にまとうことにしたのだとか。
今の時期、しし座の鼻先あたりにギラギラと輝いているのは木星です。2月3日(火)〜4日(水)には、ほぼ満月の月も近くにあるので、木星、レグルスと明るさを比べてみましょう。月に負けずに光っているかな?

2014.12【246】★しぶんぎ座流星群
最近は、「○月○日に流星群がやってくる」などとニュースに取り上げられることも多いですね。もちろん、流星が普段より多く見られる可能性はあるものの、期待は禁物です。出現数が比較的安定している「しぶんぎ座」(1月)、「ペルセウス座」(8月)、「ふたご座」(12月)の三大流星群でも、観測条件に左右されます。
さて、年初の夜空を飾る「しぶんぎ座流星群」は、1月4日(日)の夜明け前が見ごろとされています。ところが、夜明け前の空には満月直前の明るい月がまだ残っていて、暗い流星だと見つけるのはむずかしい。そのうえ、この流星群はピークとなる時間帯が短く、今回ピークと予想されている時間は、日本ではお昼前という悪条件。
というわけで、残念ながら2015年の「しぶんぎ座流星群」はあまり観測条件がよくありません。なんだか楽しくないお話になってしまいましたが、「流れ星は1つでも見えたらラッキー!」くらいの気持ちで、冬の星空を楽しみながら、のんびり空を見上げてくださいね。寒さ対策は忘れずに。

2014.11【245】★誕生日の星座
観望会などで、「私は○○座生まれなのですが、なぜ誕生日の頃には○○座は見えないんですか?」という質問を受けることがあります。そもそも星占いで使われている誕生日の星座は、どのようにして決められるのでしょうか?
公転している地球からは、太陽は約1年かけて星座(昼間なので目には見えませんが)の間を移動し、同じ星座に戻ってくるように見えます。この太陽の通り道を「黄道」と呼び、古代ギリシャの人びとは黄道に並ぶ12の星座と太陽・月・惑星などの位置が、人の運命や世の中の動きを決める重要な要素だと考えました。
このことから、西洋占星術では生まれた時の太陽の位置で誕生日の星座が決まります。今は「いて座」の時期ですが、「いて座」は現在、太陽とほぼ同じ方角にあるので、夜には沈んでしまいます。(実際には12星座と太陽の位置は少しずれています)
自分の星座は、誕生日の3〜4カ月前の夜ならみつけやすいかも。興味のある方はどんな星が並ぶ星座なのか、探してみてくださいね。

2014.10【244】★カシオペア座
みなさん、10月8日の皆既月食はご覧になれましたか。地球の影にすっかり入ってしまったあとも、赤銅色の丸い月の姿を見ることができましたね。
さて、タイトルのカシオペア座は秋の星座のひとつ。「W」の形に並んだ星は北斗七星と並んで、北極星を探す目印として有名です。
ギリシャ神話に登場するエチオピアの女王カシオペイアが星座名の由来。美貌が自慢の女王は「海神ポセイドンの娘たちの中にも私ほどの美人はいない」と口にしてしまったばかりにポセイドンの怒りを買い、海の怪物(くじら座)に国土を荒らされ、娘のアンドロメダ姫(アンドロメダ座)を生贄に差し出さねばならない羽目に。
姫は通りがかりの勇者ペルセウス(ペルセウス座)に救われましたが、カシオペイア女王は星座になっても一年中地平線下(海中)で休むことを許されず、夫のケフェウス王(ケフェウス座)とともに北極星のまわりを永遠に巡っているのです。
こんな物語を思い出しながら、登場人物たちの星座を探してみませんか。

2014.9【243】★皆既月食
10月8日(水)の夜、日本全国で皆既月食が見られます。月は東の空で18時14分頃から欠け始め、19時24分に皆既食に入ります。20時24分に皆既食が終わり、21時34分に地球の影から抜け出します。
皆既食では、月は地球の影に完全に入ってしまいます。このとき、月は見えるのでしょうか。影の中だから見えない? 見えるとしたらどんな色でしょう?
実は、皆既食中の月は見ることができるのです。太陽の光は地球の大気を通過する際に屈折します。大気中で青い光はほとんど散乱してしまうのですが、散乱しにくい赤い光は大気をすり抜け、月を照らし出します。
皆既食のときの月の明るさや色は、地球の大気の状態(水蒸気やちりの量など)によって、毎回違います。観察して、国立天文台の「皆既月食を観察しよう 2014」キャンペーンに参加してみませんか。
http://naojcamp.nao.ac.jp/phenomena/20141008-lunareclipse/

2014.7【242】★火星とアンタレス
火星とさそり座のアンタレスは、どちらも赤く見える星の代表。アンタレスという名前は、「アレス(ギリシャ神話の戦いの神・火星)に対抗(アンチ)するもの」という意味です。古代中国では、火星とアンタレス(中国名:大火)が近づくことは不吉な予兆で、天下が大いに乱れるといわれていました。日本では赤い色から「酒酔い星」とも呼ぶ地方もあるそうです。
地球と同じ惑星である火星と違って、アンタレスは自ら光っている恒星。その直径は太陽の720倍(火星の公転軌道がすっぽり入る!)もあるとされる、巨大な赤い星=赤色超巨星です。
9月28日(日)頃には火星とアンタレスが近づいて見えます。19時くらいに南西の空を見ると、2つの明るく赤い星が並んでいますよ。どちらが赤いか、見比べてみてくださいね。西には細い月も見えています。

2014.6【241】★今年最大の満月
最大の満月、といっても月そのものの大きさが変わるわけではありません
月は地球のまわりを楕円を描きながら回っています。このため、地球と月の間の距離が近いときは大きく、離れると小さく見えるのです。
8月11日(月)の満月は今年地球に最も近づいて(距離約35万7000km)、大きく見えます。ちなみに、今年いちばん遠くて(距離約40万7000km)小さい満月だったのは1月16日でした。写真などで比べるとその違いがよくわかるのですが、空にある月を眺めただけではその違いを実感するのはちょっと難しいかも。
ところで、満月の少し前、8月2日(土)は旧暦の7月7日にあたります。「伝統的七夕ライトダウン2014推進委員会」が、この日と翌3日(日)の夜はみんなで不要な明かりを消して星空を楽しもうと呼びかけています。みなさんも可能であればご協力くださいね。 http://7min.darksky.jp/(伝統的七夕ライトダウン2014)

2014.5【240】★星座
現在、一般的に使われている星座は全部でいくつあるでしょう? 答えは88です!
かつては国や地域ごとに違う星座を使っていましたが、それでは協力して天体観測するには不便。そこで、1928年に国際天文連合(IAU)が、2世紀頃の天文学者プトレマイオスがまとめた48星座に、彼が観測できなかった南天の星座を加えて88星座としたのです。星座の学名はラテン語。日本では1944年に決定した訳名が広く知られています。天文学上では、星座名はひらがな、カタカナで表記します。
もちろん、日本にも古くから伝わる星座や星の名前があります。鼓(オリオン座)や釣り針(さそり座)など身近な道具や、相撲の土俵(かんむり座)に見立てるなど、ユニークなものもたくさん。どんな和名があるのか、調べるのも面白いですよ。

2014.4【239】★水星
太陽の一番近くを回る惑星、水星。6月の初めは観察しやすい位置にあります。6月1日(日)の日の入り後の西の空には、細い月と明るい木星(-1.9等)が並び、そのさらに低いところに水星(1.4等)が見えるので、探してみてくださいね。
水星は月(直径約3,470km)よりも少し大きい(同約4,880km)くらい。表面も月によく似ていて、無数のクレーターに覆われていることがわかっています。しかし、太陽に近すぎるために観測が難しく、まだ詳しくは調べられていません。
現在、日欧の協力による水星探査「ベピコロンボ計画」が進められています。2016年以降の打ち上げを目標としており、表面探査機(ESA担当)、磁気圏探査機(JAXA担当)の2機の探査機で水星を調査します。水星の謎の解明だけでなく、地球型惑星の起源を知るためにも、ぜひ成功して欲しいものです。

2014.3【238】★おとめ座
おとめ座は春を代表する星座のひとつ。まず、北斗七星の柄をそのカーブに沿って伸ばし、オレンジ色の明るい星、うしかい座のアークトゥルスを見つけます。さらにその曲線をたどっていくと白い輝きの星に届きます。これがおとめ座の1等星スピカです。今は火星もおとめ座の方向に見えているので、探しやすいでしょう。
「スピカ」は「とがったもの」という意味で、おとめが手にしている麦の穂先のこと。英語の"spike"の語源でもあるラテン語です。
星座絵に描かれる翼の生えた女性には諸説あって、ギリシャ神話の農業の女神デメテル説、その娘で冥界の神ハデスに誘拐されたペルセポネ説、あるいは最後まで信じようとしたのに、醜い争いをやめなかった人類に失望し、天へ帰っていった正義の女神アストレイアの姿であるともいわれています。

2014.2【237】★火星の最接近
赤い星、火星がおとめ座で明るく輝いています。火星は太陽の周りを回っている惑星で、ガス惑星の木星とは違い、岩石の硬い地面を持つ地球の仲間です。
赤く見えるのは、表面の岩や土に酸化鉄(赤さび)が多く含まれているため。海はありませんが、地下に水があると考えられていて、微生物がいる(あるいは昔いた)のではないかと、科学者の間で議論が続いています。
地球の外側を回る火星は、地球と2年2カ月ごとに最接近します。その最接近の日が4月14日(月)。また、その少し前の4月9日(水)には太陽、地球、火星が一直線に並ぶ(「衝〈しょう〉」といいます)ので、この頃の火星はほぼ一晩中夜空に見えています。
4月14日の21時ころ、東の空をご覧ください。晴れていれば真珠のような輝きのおとめ座の1等星スピカと、満月に近い月、そして火星でつくる三角形が目に入ることでしょう。星の色をぜひ見比べてみてくださいね。

2014.1【236】★北斗七星
北極星を探すのに便利な星の並びとして、有名な北斗七星。春先には北の空の見やすい位置に昇ってきて、見つけやすくなります。
特徴のある形に並んだ7つの星は世界各地でいろいろなものに例えられています。柄杓の他にも、神様や王様が乗る車に見立てられたり、7人の賢者だったり、フライパン、舟の舵などなど。遠い昔から人びとに親しまれてきた星なのですね。
北斗七星は「おおぐま座」の腰から尾の部分にあたります。この星座名は、ギリシャ神話に由来しているのですが、北斗七星の柄の部分がしっぽだとすると、熊にしてはずいぶん長すぎると思いませんか?
これには、神様が熊のしっぽをつかんで天へ放り上げたために長く伸びてしまった…というお話があるんです。想像するとなんだか面白いですね。


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